IFRS会計学基本テキスト
- サマリ
IFRSの概要、特徴、ベースにある考え方からはじまり、各基準の詳細・日本基準との差異が説明されていきます。章末に例題、練習問題もあるのでアウトプットを通して理解を深めることもできます。
レベル感としては以下のような人におすすめかと思います。価格:3,850円
(2022/7/24 11:57時点) - 誰が書いているのか(肩書は出版時のもの)
- 橋本 尚:大学教授
- 山田 善隆:会計士。PwC京都パートナー
- この本を読んでわかること
- IFRSの特徴
- 原則主義
日本基準、米国基準が「細則主義」であるのに対し、IFRSは「原則主義」のスタンスを取っています。
細則主義と原則主義の違いは、超ざっくり言うとこんな感じです。
細則主義:「この場合は、こう処理せよ」というルールを細かく規定
原則主義:「財務諸表はこうあるべきなので、そこから逸脱しないように処理してね」と、原理原則を示して具体的にどう処理するかの判断は当事者に委ねる
IFRSではどう会計処理に落とし込むかを事例ごとに判断し、その適否は監査人がジャッジします。
そうなると、ルールを調べて単純に当てはめればいいという訳にはいかないので、会社側も監査人側も取引そのものや、会計への詳細な理解が必要になります。 - 概念フレームワーク
概念フレームワークとは、前提や基礎概念を体系化したもので、財務会計の前提や各基準を設定する際や、基準や解釈指針がない事例の会計処理を考える際のよりどころになります。困ったとき、迷ったときに立ち返るものという意味で、企業でいう“Mission”、“Value”のようなものと理解しています。
例えば、以下のようなことがフレームワークの中にあります。
負債とは、過去の事象の結果として経済的資源(Economic Resources)を移転する企業の現在の義務(Present Obligation)をいう。
これに当てはめると優先株式で、保有者側が償還(買取)を請求できる金融商品は「株式」という名前がついていても上記の定義に合致するため、負債として認識されます。
- 原則主義
- 各基準の詳細
収益、引当金、減損といったテーマごとに節が設けられ、該当する基準、基準の詳細、日本基準との差異といった説明があります。
殴り書きのようになってしましますが、印象に残っているものを記載していきます。(備忘録的なものなので、読み飛ばして頂いてokです。)
- IFRSの特徴
のれんや耐用年数のない無形資産は毎年減損テスト(上記イとウ)が必須
- 戻し入れ
過年度の減損の兆候がなくなった、軽減された場合は戻し入れが可能。
のれんの戻し入れは不可
- リース
- CF計算書の区分
- 元本部分:財務活動
- 利息部分:営業活動or財務活動(ほかの支払利息の区分と合わせる)
- 引当金
- 退職給付
- 期待運用収益と利息費用
純額で計算する。制度資産と退職給付債務の差額(BSに計上する額)×利率で計算。日本基準では期待運用収益と利息費用をそれぞれ計算する。 - 数理計算上の差異
発生した期にOCIに計上し、リサイクリングはしない。(PLを通すのはNGだが、利益剰余金への振り替えはok。数理計算上の差異を計上→即時利益剰余金へ振替の開示例あり) - 過去勤務費用
発生した期に純損益に計上。通常の勤務費用も、過去勤務費用も同じように処理する。(日本基準ではOCIに計上後、平均残存勤務期間にわたって償却(リサイクリング)する。)
- 期待運用収益と利息費用
- 有給休暇引当金
- 負債の額の割に、PLインパクトは大きくなりづらい。(毎期、同じくらいの人数が、同じくらい有給を消化していれば負債の残高は変動しない。)
- 金融商品
- 売買目的以外の資本性金融商品
FVPLまたはFVOCIで処理。OCIオプションを適用した場合、売却時のリサイクリングは不可。(剰余金との振り替えはok)
- 売買目的以外の資本性金融商品
- 企業結合
- 日本基準:購入のれん
- IFRS:購入のれんor全部のれん
- CF計算書の区分
- 終わりに
1周目は通して読みつつ章末の練習問題を回答、2周目は章末の問題だけ解いていき、理解が浅い部分を読み直すというように使いました。各論点の詳細が網羅できるものではありませんが、「日本基準のとの差異にこんなものがあったな」、「IFRS特有の論点にこんなものがあったな」というのを把握できるレベルにはなりました。
IFRSはこれから学んでいきたい人には是非おすすめです!